パスツールが白鳥の首フラスコによって微生物の存在を発見、証明して以来、バイオテクノロジー、バイオケミカルそしてそれにつながるバイオインダストリーは、極言すれば、分離培養可能な、単一微生物種(シングルセル、モノカルチャー)を利用し、その微生物と酵素の同定と特定の解析をするものにすぎませんでした。すなわち、単一微生物を純粋培養し、その基質と代謝作用から一つの発酵生産物質を生み出すものでしかありませんでした。
ところが、自然界では生物と生物、生物と気候・風土等が深く関与して多様な相互作用を維持しながら共存しています。微生物だけを見ても、空気1cc中に7~8個の数種の空中浮遊菌が存在しており、土壌1cc中には1億個もの多種多様な微生物が存在し、共存しているのです。
つまり、単一微生物種を扱う現在のバイオケミカルは、単一微生物を純粋培養することで、99.9%を占める他の多種多様な微生物を捨象してしまうという重大な誤りを犯してしまったのです。また、生物及び微生物間のダーウィンとメンデルスの法則に従う遺伝学的進化論によるDNAランゲッジの生命情報接合を無視した幼稚な短絡的な世界に陥ったのです。その結果、純粋培養した単一微生物を自然界、例えば土壌に戻しても、拮抗作用を起こして死滅してしまうという結果を招いたのです。
しかし、現代においても単一微生物種による発酵に止まらない並行復発酵を用いた技術があります。それが日本における清酒製造技術です。そしてさらに自然界における微生物の複合的な共存関係をそのまま発現させたのが、複合微生物動態系解析における複合発酵(情報微生物工学・情報生命工学・分子生物学)なのです。複合発酵とは、単発酵から復発酵、並行復発酵、平衡復発酵、固形発酵の連動と作用を引き起こし、基質と代謝から置換と交換という有機・生物的情報エネルギー触媒を生み出し、その状態を創り上げることで、すべての微生物を有効な生態系へ導き、その微生物の情報とエネルギーの連動サイクルを生じ、微生物の循環作用を発現し、共存・共栄・共生を実現しているのです。